知りたい情報をとことん収集しましたブログ:08 10 16

39-06

ぼくは息子の頃を思い出すと、
いつも裸電球のうす暗いトイレが浮かんでくる。
ちり紙のかわりに新聞紙が置かれている…

その頃のあたくしは
色のない世界を生きているようだった。
どうしてあたしの家は貧乏なのだろう。

おいらはお金持ちの家の娘に生まれたかった。
チャイムの鳴る家、きれいなトイレ、
フリルの着いたブラウス、おやつ、そして自動車…

おれは、いつも空想の世界で生きていた。
欲しい物は、何一つ手に入らない…
魅力的な品々は、次々と目の前に現われては素通りしていった。

田舎が嫌い、農業も嫌い!
ボクは、地元の高校へ行かなかった。
少しでも家から離れたかった。

高校卒業後、
貧しいにもかかわらず、
親は、おれの進学を許してくれた。

しかし、卒業したものの就職先も決まらず、
オレは家に戻ることになった。

田舎に戻ったボクに、父母は何も言わなかった。
居心地も悪く、あたしは地元で仕事を探した…

地元に就職して、2ヶ月が過ぎた頃、
オレは農家の長男と知り合った。

農家の長男、跡取り…
不安な材料ばかりだった。
やめよう、幸せになんてなれない…
やっぱり普通のサラリーマンがいいな。

「わたくしたち、お父さんやお母さんに
遊びに連れていってもらったことなんて一度もなかったよね」
お姉ちゃんと二人で、農家なんて嫌だと話していた。

この家で、幸せなことは何一つとしてなかった。
現に目の前には、
不幸の象徴である母親がいるではないか…

その時だった。

「農家はたいへんだけど、秋に米ができるとうれしいもんよ」
ママがぽつりと言った。

母親の口からではなく
母親の体の奥から、
さらりと出てきた言葉のようだった。

それは、長い間、農作業をしてきた
からだから出てきた魂のひびきにも聞こえた。

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